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中国映画情報
当校で学んでいる映画プレゼンテーター、松下由美さんが中国語圏の映画を紹介するコーナーです。

胡湖の理髪師

胡湖の理髪師

老人とネコが寛いでいる街は暮らしやすい街に違いない。
急速な発展を遂げている北京なのに、胡同 hutongと呼ばれる路地にちょっと入れば椅子を出して涼む人、机を出して麻雀に興じる人々がいる。そしてはためく洗濯物。外国人や長く国外にいた中国人が「中国人にはプライバシーの概念がない」とよく言うけれど、この私生活さらけ出し感覚を見ると納得がいく。トイレのない家となると公衆トイレで用を足すわけで、引き込もってもいられない。
初めて行った北京で私が滞在したのが胡同の中の北京中央戯劇学院。以来何度もそぞろ歩いている鼓楼や后海付近が舞台の『胡同の理髪師』(原題:剃頭匠)。
胡同ファン(推定人口不明ながら mixiには「我愛胡同」というコミュニティがありました。メンバー数:283人)の心をくすぐる題名であります。
ドキュメンタリーのようで劇映画。演じているけれど、演じているのは自分という難しさを飄々とこなしている洒脱な現役理髪師、靖奎(チン・クイ)さん。この映画で、靖さんには世界最高齢のアマチュア俳優という肩書きが加わりました。
ドキュメンタリーもどきを撮っている私にとっても、中国人は撮りやすい。そもそも中国人気質が俳優向き。声が大きい、人なつこい、おどおどしていない。かといって靖さんは我が強いわけでも、高官や梅蘭芳といった京劇役者たちの髪を切ってきた栄光をひけらかすでもない。淡々としていて自分のペースを崩さない、まさに清貧である。
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そんな彼には自分や子供の悩みを言いに来る息子がいる。息子は役の上の設定と思われるが、ひ孫が産まれたと言ってもひ孫やその家族が訪れるでもない。靖さん世代は過渡期の中国で失われていく古き良き時代の最後かもしれない。そして中国映画に付きものの鬼嫁がここにも。でも女性がガミガミ言いすぎるせいで、実は男性は得をしているのかもしれません。

先月の『ラスト、コーション』に続き、また麻雀好きが楽しめるシーンも登場します。靖さん曰く「麻雀は頭の運動」。マンション暮らしでは麻雀相手を探すのもままなりません。不便なようで、隣人の様子が分かる胡同の暮らしこそ老人に優しい住まい方ではないのでしょうか。
毎朝5分遅れる靖さんの置き時計。修理に持っていくと店主が言う。「修理をすると壊れるかもしれないから、そのまま寿命を全うするといい」。
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テレビで紹介された靖さんの上品さに惹かれて映画を撮った哈斯朝魯(ハスチョロー)監督は内蒙古の出身です。北京人ではない彼だからこそ胡同を、靖さんを記録しようと思ったのかもしれません。残念ながら撮影が行われた部屋は映画用に借りたもので、室内も小道具も整えたそうです。靖さんの実際の家では狭くてカメラが入らなかった、というのはいかにも胡同生活らしい。
『懐旧(レトロ)的中国を歩く?幻の胡同・夢の洋館』(樋口裕子著 NHK出版)は著者の胡同への愛着が伝わってくる本です。北京の様変わりように、今となっては胡同の記憶を留める貴重な記録の役割を果たしています。

昨年94歳で初めての海外を経験した靖さんのご様子は通訳をされた水野衛子さんのブログに詳しいのでご一読下さい。
http://dianying.at.webry.info/200711/article_12.html
http://dianying.at.webry.info/200711/article_13.html

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映画に登場するモツ屋「東興順爆肚張」は、今までも何本もの映画の舞台になっている老字号(政府認定の老舗)です。私も何度か前を通りながらいつも満席か、一度は一緒にいた友人に「内蔵系はどうも。。。」と却下されていまだ食べずじまい。どうかオリンピックを乗り切って頑張って欲しいです。 写真を提供して下さったayaziさんのローカルグルメ日記は行ったつもりになれます。

http://ayazi.blog75.fc2.com/?no=15&ul=7985c67b50563b60
私も北京で色々食べていますが、幸い(?)食事で体調を壊したことはありません。北京では中国各地の料理を食すことができ、飽きません。

映画で興味深かったのが、以前は放睡と呼ばれていたが、日本人が来て按摩と呼び出したというくだり。北京では犬も歩けば按摩医院に当たる。安くて快適、おまけにこちらの下手な中国語会話にも付き合ってもらえるとなれば一石二鳥。
ああ、按摩が私を呼んでいる。。。
【アジア新星流 FOCUS FIRST CUTS】
中国人・中国語の多様なあり方、そして新しい映画の潮流を知るのに格好の映画祭が3月1日からシネマート六本木で開催されます。6人の若い才能に好きに映画を作る機会を与えたのは、かのアンディ・ラウ。
四川訛りと疾走感とおバカっぷりが堪能できる中国の大ヒット作『クレイジー・ストーン ?翡翠協奏曲?』、香港団地妻+スタイリッシュな映像=すがすがしさ『MY MOTHER IS A BELLY DANCER』、エンジニアから転身、日本文学を愛読するホー・ユーハン監督の『RAIN DOGS』。中国語方言が混ざっているのはマレーシア映画ならではです。
http://www.cinemart.co.jp/theater/roppongi/index.html
映画プレゼンター 松下由美
胡同の理髪師公式サイトhttp://futon-movie.com
2008年2月9日 (土)より神保町 岩波ホールにてロードショー。
松下由美・・・・東南アジアとヨーロッパに長く滞在。
映画祭・映画イベントの司会・英語通訳や映画撮影の製作を担当している。
アート、インディペンデント系、アジア作品を多く担当し、中国語圏作品好きも高 じて毎年中国へ短期留学。
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